修理事例⑨AT警告(チェックランプ)点灯

プレマシー(CREW)チェックランプ点灯で走行不良

AT警告(チェックランプ)が点灯しています。エンジンチェックランプも同時に点灯しています。

走行は出来ますが正しく変速できていないようです。


車両情報

メーカー:マツダ  車種:プレマシー  型式:CREW
年式:平成26年  総走行距離:10万km

【状況】
■AT警告(チェックランプ)が点灯している。消去するとしばらくは点灯しない。
■警告(チェックランプ)が点灯している時は、3速で走行している感じがする。
■大きなシフトショックを感じた。
■シフトソレノイドの不良と言われたことがある。


診断機で異常コードを確認

異常コードは二つ。

一つは『P0753 シフトソレノイドA系統:断線/短絡』、もう一つは『U2064 整備書で確認してください』でした。

『U2064』は、検出条件が「他ユニットからワーニング・ライト点灯要求信号(CAN)を受信した場合」と整備書データにあるので、『P0753』の警告を受信したことによる点灯と考えられます。一旦この故障コードはスルーします。

故障コード『P0753』の検出条件

整備書データを確認すると、この故障コードはシフト・ソレノイドAの電圧値に変化が無い時に点灯するようです。

その場合「シフト・ソレノイドAが作動していないのか?ソレノイドの不良か?」と疑いたくなりますが、この場合ソレノイドが正しく動作していても、そのデータを正しく送信及び受信できていなければ『電圧値に変化が無い』のと同じなので、ソレノイド不良なのか測定値の送受信異常なのか、さらに点検して選択肢を絞っていきます。

コード消去と現象の再現

故障コードには故障時の様々な詳細データを含んでいるのでバックアップしておきます。データ保存後はコード消去を行い故障を再現させます。

簡単な走行をしましたが現象は再現されず、チェックランプは点灯しませんでした。これはお客さんからの情報通りなので、粘ってみたところ再現しましたが再現方法には特定の条件が必要でした。

条件①エンジンやミッションだけでなく、エンジンルーム内部が熱くなっていること。
条件②走行時の速度が60km前後位から、やや強めにブレーキを踏んで急減速からの停止をすること。(例えば、交差点に進入しようとしたら信号が黄色になったので頑張って止まろうとする時のような感じ)

上記の2点が揃うと高確率で発生します。再現時は後ろから追突されたような「ドンッ」という衝撃がきて、4速や5速に入らなくなりました。

単体点検やデータでの判断は困難

症状を再現しにくい不具合は、単体点検やデータでの判断が困難です。

例えば今回の故障コードに挙げられているシフト・ソレノイドは、ミッション内部にある部品です。

目視の点検をするとなるとオイルパンを取り外すなど点検料金が発生するような作業が必要ですが、特定の条件下でしか不具合は発生しないので、点検している時に異常がない場合は点検しても何もわからず無駄になることがあります。

ちなみに右図の赤い部分がシフトソレノイドなんですが、交換するとなると矢印の先の部品すべてセットでしか供給がないため、部品代だけでも約11万円です。試しに交換してみましょうという金額ではないですよね。

赤い丸で囲われているのがシフトソレノイド

もう一つの心強い判断材料であるデータの点検ですが、不具合が出るのはほんの一瞬なので一秒間隔でデータを採取しても不具合の瞬間を捉えるのは困難です。

こんな時は現在の状況、情報、経験から推察します。

怪しい電気系統

この車両で気になる所は故障コード(サービスコード)です。

プレマシーにはシフトソレノイド系統の故障コードが細かく設定されていて、『P0751』ならシフト・ソレノイドAのOFF側固着、『P0752』ならシフト・ソレノイドAのON側固着、『P0756』ならシフト・ソレノイドBのOFF側固着といった感じで、どのソレノイドがどのように不具合を起こしているかが分かります。

今回の故障コード『P0753』は、整備書によると『固着』ではなく『A系統の断線/短絡』とあります。これは、動きが悪いのではなく情報が途切れることを表すので、機械的な不具合より電気的な不具合の可能性が高いということです。

もう一つ気になるのは症状です。常に不具合があるのではなく、特定の条件下でしか発症しないうえに、診断機で故障コードを消去すると何事もなかったように走行できます。

ちなみに故障コードが出ている時の変速不良は、フェイルセーフ(異常時の緊急措置機能)によるもので、整備書によると『P0753発生時は、第4速、第5速、ロックアップを禁止し、 ライン圧を最大にする。』とありますので、これは正常な反応と言うことです。

さらにもう一つ気になるのは、ミッションを暖めるだけでは発生しない事です。

これはあくまで経験による確率の話ですが、エンジンルーム内全体が暖まってようやく症状が出たと言うことは、エンジン内部やミッション内部で不具合を起こしている確率はやや低く、エンジンルーム内部の電気系統の不具合である確率がやや高くなります。

これらの情報を基に可能性の高い箇所から攻めるとなると、シフトソレノイドより先にコントロールモジュールとそこまでの配線を疑うほうがよさそうです。

コントロールモジュール交換

コントロールモジュールまでの配線やカプラーを点検しましたが、損傷や腐食はありませんでした。念のため配線の断線がないかサーキットテスターで点検しましたが、異常はありません。

過去の修理事例にあったジープ ラングラーのような可能性はないかと言われると、全くないとも言えませんが、配線の断線であれば一瞬ではなく最低でも一秒以上の不具合と異常コードを検出するので可能性は低いと言えます。

したがって今回の診断結果はコントロールモジュールと判断しました。

コントロールモジュールはトランスミッションの真上についていて、重要な電子部品なんですが放熱を考慮してなのか、カバーもされておらず濡れ放題の汚れ放題です。

部品代は約5万5千円と安くはない部品ですが、シフトソレノイド(コントロールバルブASSY)の11万円より安くて確率が高いならと着工許可が出ました。

交換後の走行テストで異常なし。納車後も不具合の再現はないとのことなので、今回の故障はコントロールモジュール交換で無事に修理完了です。

赤い丸で囲われているのがコントロールモジュール