修理事例②エンジン交換

デリカD:5(CV5W)エンジンオイルが減る

三菱のデリカD:5。定期的にオイル交換をしていますが、エンジンオイルが減ってメーター内の赤いオイルランプが点灯します。エンジンの下廻りを見てもオイル漏れは一切ありません。


車両情報

メーカー:三菱  車種:デリカD:5  年式:平成20年
【状況】
■エンジンオイル消費
■ガソリン車でターボは無し
■オイル漏れは全くない
■エンジンの調子は悪くなく走行は全く問題がない
■オイルを適量入れても、4000kmほど走行するとオイルランプがチラチラ点灯し始める


初めに結論から

オイル消費についてですが、ノンターボ車でエンジンオイルの漏れがない場合、残念ながらエンジン本体に何らかの不良があるので、エンジン交換になる可能性が非常に高いです。昔は故障個所を特定して、エンジンオーバーホールを実施してきましたが、早く仕上げてほしいというユーザーが多いことや中古品やリビルド品が充実していて価格もリーズナブルになってきたことから、エンジン載せ替えが主流となってきました。
『意外とあっけない解決』を期待はしつつも、覚悟のうえで診断します。


どこからオイルを燃焼しているか

オイル漏れがない、冷却水に混ざってない、タービンはついていない、となれば『オイルを燃焼してしまっている』ことは確定なので、後は『どこから燃焼室に入り込んでいるか』が診断のポイントになります。
とはいえ、入り込む箇所も限られてきます。

①燃焼室上部からのオイル下がり
②燃焼室下部からのオイル上がり
③インテークマニホールドからスロットルへの侵入
※画像のオレンジ色部分が、エンジンオイルの回っているところで、赤い矢印が回ってはいけないところです。


エンジンの状態を確認

外側からエンジン内部のピストンやエンジンブロックを見ることはできないので、エンジンの最上部についているシリンダーヘッドのカバー(タペットカバー)を外してみます。

スラッジによる不具合

エンジン内部がスラッジで汚れていました。これはエンジンオイルの交換を怠るとなってしまう現象です。オイルの通り道は非常に細いので、これでは通り道からオイルが流れなくなります。
画像2枚目はカバーです。カバーにもぎっしりスラッジが付着していました。
画像3枚目はきれいなエンジンの参考画像です。


解説

エンジンオイルはオイルポンプによってエンジン上部に押し上げられますが、下がるのは重力に任せて油路から帰っていきます。しかし、スラッジによって油路が狭くなると、オイルの溜まる箇所が所々に出来てしまいエンジン上部に溜まりやすくなります。逃げ場が少なくなったオイルたちは、行ってはいけない画像の③から逃げ出して燃焼室に侵入して燃やされます。
オイルが燃やされると『排気ガスが汚れる』『エンジンオイルが減る』『オイルの汚れが早くなる』『出力の低下による燃費の低下』等、様々な不具合が出ます。


エンジン載せ替え

オイル消費などの症状が無ければ、フラッシングオイルでスラッジを除去する選択肢もありますが、症状が出ている場合は効果がありません。フラッシングオイルは、こうならないための予防として使用するものと考えたほうが良いかと思います。

今回はリビルドエンジンで交換です。リビルドエンジンは、中古エンジンを分解して清掃を行い、使えない部品は新品に交換したうえで再組み立てされています(いわゆるオーバーホールと言う作業)。新品時の性能状態に戻されているので、中古品よりも信頼性が高く、保証がついているのが特徴です。
これだけの仕上がりで在庫も豊富にあれば『載せ替えたほうが早い』と言われるのも頷けます。
リビルドの在庫は、販売台数が多くてさらに故障が多い物ほど在庫も多い傾向にあります。

車両からエンジンを切り離し、付属部品をすべてリビルドエンジンに付け替えます。オイルシール、ガスケット、オーリング等は再利用すると『漏れ』の原因になるため、全て新品に交換します。

不良のエンジンはリビルトメーカーに送ります、リビルドメーカーでコアとして使用され、分解して清掃を行い、使えない部品は新品に交換したうえで再組み立てされたものが、またリビルドエンジンの在庫として世に流通します。

エンジンオイル、トランスミッションオイル、冷却水(クーラント)を入れて、冷却水のエア抜きをします。
オイル漏れや水漏れ、各ボルトの締め付け確認を行って作業は完了です。
後日、エンジンオイルやタイヤ交換でご来店の際に、エンジンオイルの汚れ具合や量を確認しましたが、かなりきれいなエンジンオイルが適量入っていることが確認できましたので、今回の修理はこれにて終了です。