修理事例⑥スロットル清掃

フィット(GK3)エンジンストール

時々エンジンストール(停止)するとのご依頼です。

エンジンをかけ直せば普通に始動出来て、普通に走れるのでそのままで乗り続けていたようです。


車両情報

メーカー:ホンダ  車種:フィット  型式:GK-3
年式:平成27年  総走行距離:18万km

【状況】
■時々エンジンストール(停止)する
■エンジン再始動で問題なく走れる
■エンジンの調子は悪くなくメーター警告灯の点灯はない


異常コードなし

メーターの警告灯は点灯していませんが、念のため故障コードが残っていないか確認します。

異常はありません。過去コードも残っていませんでした。

再始動に苦戦する場合は『始動不良』と残っていたりしますので、エンジンの始動に異常は無いと思われます。


現在の車両コンディションをデータで確認

DBWカーボン詰り率が100%を超えています。

DBWとはドライブ・バイ・ワイヤの略ですが、ここでいうワイヤは『電気的なワイヤ』を意味します。つまるところ電子スロットルの事を指しています。

スロットルがカーボンで汚れて詰まっていますよと言うデータですが、ホンダ車では珍しくないデータと症状だと思います。

この時のエンジン回転数は585rpmです。

このフィットのアイドリング正常値は、暖気後無負荷時で700±50rpmなのでやや低いと言う事になります。

これでドライブに入れたり、エアコンを入れたり、走行中に急減速からの停車で、エンジン回転数が下がって耐えきれない時にエンストします。

『止まりそうだけど耐える』こともしばしば。


スロットル清掃・取付

カーボンを落とすためにスロットルを取り外して清掃します。

カーボンとは『炭素(すす)』の事ですが、スロットルのすすはマフラーの出口などに付着しているすすと違って、油分が混ざっていてネバネバしているのが特徴です。

拭いても綺麗には出来ないので専用の溶剤を使って洗浄します。

交換となった場合は部品代だけで5万7千円なので、非常に価値のある清掃ですね。

清掃後はガスケットを新品に交換して取り付けます。ガスケットは再使用すると吸気漏れが発生する可能性があるので必ず交換しましょう。

吸気漏れがあるとエアーフローに影響が出てしまうので、それこそ回転数に影響を及ぼします。まさに本末転倒です。


確認・学習

取り付け後は過去の学習値をリセットして、新たに学習させます。学習は診断機の機能を使って実施します。

学習完了後にDBWカーボン詰り率を確認すると5.1%になりました。約95%除去できたと言う事ですね。

エンジン回転数を見てみると688rpmです。基準値は700±50rpmなので基準値の範囲内になりました。

症状が再現しなくなったので、修理は完了です。


修理のポイント

故障コードのない修理は診断が難しいですが、今回のケースはホンダ車でよくあることなので、当たりは付けていました。ただし、これで改善されるかどうかは『ほかにどのような不具合が出ているか』で判断します。

例えば、始動不良がある場合は燃料系統、加速不良がある場合はVTEC(ブイテック)系統やAT・CVT系統、加速不良とアイドリング不良がある場合は点火系統といったように、不具合によって当たりを付ける箇所が変わってきます。今回は、他に不具合は無く走行できるので、このような判断になりました。