修理事例⑤ハイブリッドバッテリー交換

アクア(NHP10)ハイブリッド異常の警告灯

平成25年のアクアでハイブリッド異常の警告灯とエンジンチェックランプが点灯しています。


車両情報

メーカー:トヨタ  車種:アクア  年式:平成25年
【状況】
■ハイブリッド異常の警告灯
■エンジンチェックランプ点灯
■エンジンの調子は悪くなく走行は可能
■総走行距離16万km

異常コード P0A80-123『電池内部異常』

ハイブリッドの監視システムは優秀で、ほんの少しの異常でも検出します。また、フリーズフレームデータ(異常を検出したときの車両データ)が残されていて、診断しやすくなっていて助かります。

ハイブリッドバッテリーは、電池温度や走行負荷(電流)の状態によっては症状が再現しない場合があって、その時はフリーズフレームデータが重要になるので、データの保存は不可欠です。

異常コードは『電池内部異常』なので、HVバッテリの故障を疑いながらの点検をします。


フリーズフレームデータで異常値がないか確認

異常が発生したときのデータを確認します。

バッテリブロックの電圧にばらつきがありました。隣のブロックとの電圧差が1V以上ある場合は『異常値』と判断します。

電圧差に規則性がある場合はボルテージセンサを疑いますが、規則性が無いのでHVバッテリの異常と判断します。

念のため現在の電圧を計測しましたが、ブロック6だけ電圧が低いのでHVバッテリの異常と断定しました。

プリウスと比べると、アクアのほうがモジュール数が少なく、モジュール一つ当たりの仕事量がプリウスより多くなることから、アクアのHVバッテリはプリウスより故障しやすいです。


ハイブリッドバッテリ交換

HVバッテリはリヤシートの下に格納されています。リヤシートの座面を取り外すと骨組みが見えるので、これも外します。

ここから先の作業には感電により命を落とす危険があるため、低圧電気作業用絶縁ゴム手袋を使用します。持ち上げるときに手伝ってもらうので二つ準備します。

※HVバッテリを取り扱う場合は、低圧電気取扱の資格が必要です。また、修理書の手順を参考に取り外す必要があるので、インターネット等で得た情報を基に、安易な気持ちで触るのはやめましょう。非常に危険です。

ブロアのホコリも清掃しておきます。

全くの余談ですが、ディーラーに務めていたころに初代プリウスのHVバッテリーを交換していましたが、初代プリウスのHVバッテリーはリヤシートの背もたれの後ろに大型のバッテリが搭載されていて、持ち上げるにはとてもとても重いため、専用のクレーンが本部から支給されていました。

あれから20年。ここまで小型化されたことに技術の進歩と開発者の苦労を感じます。

日本の車って本当に凄いですよ。


交換後の確認

診断機で故障コードの確認をします。

異常が無いことを確認してから、過去コードを消去します。過去コードを消去し忘れると、次に不具合が発生したときに紛らわしいデータになり、次に点検する整備士が悩みます。

ブロック電圧を確認します。電圧差が無いことが確認できました。これで修理完了です。


修理のポイント

今回は「あと2年持てば良いので、中古で安く済ませたい」とのご依頼でした。

さすがに中古のHVバッテリでは博打になるので、2年保証付きのリビルドバッテリを使用しました。診断料・交換料と合わせて税込み約13万円で、新品で交換するより4~5万円ほど安くなっています。

電圧差に規則性がある場合はボルテージセンサの交換で済む可能性がありますが、ボルテージセンサでも約38,000円の部品代なので高いですよね。ちなみにボルテージセンサ不良だったことが無いので、この手の故障はHVバッテリを疑ってしまいます。

ハイブリッド異常が点灯した場合は、点灯した時のデータが重要なヒントになるので、あちこち整備工場を回らず一つの工場に絞って、データで診断することが大切だと思います。