修理事例①デュトロ配線修理

デュトロ(ZXU411M)エンジンがかからない

日野のデュトロ。セルモーターは回るけどエンジンがかからない車両の、修理事例です。お客さんのお話では「今までも時々かからない時はあったが、普段あまり乗らないからだと思っていた」とのことでした。


車両情報

メーカー:日野  車種:デュトロ  年式:平成13年
【状況】
■セルモーターは回るがエンジンがかからない
■初爆がない
■キースイッチONでもエンジンチェックランプが点灯していない


初めに気が付いた違和感

キースイッチをオンにしたときにエンジンチェックランプが点灯していませんでした。
通常は、キースイッチONでランプが点灯して、エンジンをかけると消灯しますが、この車両は何をしても点灯することはありませんでした。もちろんメーターやメーターバルブの不良も可能性としてはゼロではありませんが、常に点灯しているバルブではありませんので、消耗しにくいことから可能性は低いと判断して、可能性の高いところから点検することにします。


診断機につないでみる

診断機を接続してチェックランプの異常を確認しますが、早速、異常が発生しました。『通信異常』となって車両のコンピューターにアクセスできません。
他の車両に接続すると通信できるので、診断機の故障ではありません。この場合考えられるのは、下記の3つでしょうか。
①バッテリー電圧が低いため、ECU(エンジンコントロールユニット)にアクセスできない
②ECUまでの通路(配線、カプラー、ヒューズ・リレーボックス)に異常がある
③ECUが故障している


可能性の高いところから点検

こういった場面では、焦ってあちこち触っていくと時間がかかってしまいますので、落ち着いて推理します。
①はセルモーターが回るほどなので、可能性は低いと考えます。③はあくまで私見ですが、経験上ECUを交換して解決した事はあまりないです。点検するのもリスクがあるので、あとに回しても良いと判断しました。したがって、②から進めます。②の中でも、トラックの場合は『雨にあたる配線や、ヒューズ・リレーボックスがある』ことがポイントで、まずは室内より室外を疑いたくなるので、雨にあたる場所についているヒューズ・リレーボックスを点検します。


配線図を見ながら関連個所を絞る

エンジン始動に関わる所を重点的に確認します。リレーの中でもかなり重要なメインリレーがこの中にあるので、メインリレーだけは無条件で確認箇所として候補に挙げます。その横に、もう一つ重要なIG2リレーがあるのでこれも点検予定に入れます。


候補に挙げた箇所を確認

車両の疑わしい箇所を確認してみると、ヒューズ・リレーボックスを開けてすぐに見つかりました。赤枠の箇所に緑青(ろくしょう)が見えます。雨水が入り込むと起きる現象です。赤枠の箇所は初めから何もついていないので、これが原因なのではなく、ここがこうなっているならば、メインリレーとIG2リレーもこうなっている可能性があると言う事です。

メインリレーを外してみると、もっとひどいことになっていました。焼けて少し溶けてます。水が入り込んで、リレーの土台に水が溜まっている状態でエンジンをかけようとしたときに、焼け溶けたんでしょうか。
念のためすべてのリレーを外して、焼けた跡があるものは交換。


部品の交換と修理

リレーの土台をごっそり外して配線を修理。

修理した配線の導通を確認。

リレーは、焼けたものや緑青(ろくしょう)が発生しているもの合わせて3つ交換です。左端のメインリレーが焦げていて最も危険です。水が入る原因となった、ヒューズ・リレーボックスのふたも交換。


修理完了。今回のポイント

エンジンの始動、チェックランプの点灯(エンジン始動後は消灯)すべて正常になりました。
今回は偶然読みが1回で当たりましたが、当たらず悩み続けることもたくさんあります。今回のポイントは、お客さんからの「今までも時々かからない時はあった」「普段あまり乗らない」と言われたことと、エンジンチェックランプが点灯していないことが大きなヒントでした。
推理の精度は、車を使用している人のちょっとした情報が大切です。修理をご依頼の際には、異常前~異常後の『音』『におい』『感覚』を詳しくお伝えください。早期解決を目指して頑張ります。